火災保険は継続or見直し?住宅ローンを借り換える場合の選択肢とは?
住宅ローンを契約した際、火災保険はどこで契約しましたか?自分で見積もりをとって探した人もいるかと思いますが、銀行と提携する火災保険にそのまま加入したという人も多いはず。
実は勘違いしやすいところですが、住宅ローンの契約と火災保険の契約は別。例えば住宅ローンの借り換えを行う際、火災保険も乗り換えないといけないというきまりはありません。
つまり住宅ローンを借り換えても、火災保険はそのまま契約していた保険を継続してもいいですし、新たに乗り換えても良いのです。
そこで今回は、住宅ローンの借り換え時における火災保険の見直し方について解説していきましょう。
ここが疑問!住宅ローンを借り換えるなら火災保険も入り直すべき?
今の住宅ローンに申し込んだ際、同時に火災保険の加入手続きも行ったことを覚えていますか?基本的に住宅ローンを契約する場合、どこの金融機関で借りても火災保険への加入が必須となっています。
では住宅ローンの借り換えの場合は再び火災保険に加入する必要があるのでしょうか?解説していきましょう。
住宅ローンを借り換える場合。火災保険は継続もしくは乗り換えてもOK
住宅ローンを借り換える場合は、火災保険をどうしたらよいか?と思う人もいるはず。結論から言うと、基本的には以下の2通りの選択肢が挙げられます。
- 現在加入している火災保険を継続する
- 新しい火災保険に乗り換える
どちらを選んでも良いのです。
要は、借り換え先の住宅ローンを契約する段階で火災保険に加入している状態ならば「継続」「乗り換え」どちらでもOKということ。
住宅ローンを貸し出す金融機関としては、担保となる物件が火災で焼失してしまった場合、資金を回収できなくなるリスクを恐れています。そのため住宅ローンの契約の際には、火災保険への加入を条件としている金融機関がほとんどです。
ただ、火災保険は1社の保険にだけ加入していれば済む話。火災保険を複数契約していても、万が一の補償は実際の損失額を上回るということはありません。
そのため住宅ローンの借り換えで二重に火災保険に加入してしまった、というミスをしないよう気をつけてくださいね。
借り換えで火災保険を見直そう!必要な補償内容になっているか確認を
住宅ローンを借り換える際、今加入している火災保険をそのまま継続してもよいでしょう。しかし、火災保険も定期的に見直しが必要。
住宅ローンの借り換えは火災保険を見直す絶好のチャンスなのです。
この機会に必要な補償内容になっているかを確認してみましょう。
火災保険で見直すべきポイントは以下のとおりです。
- 契約金額の設定方法は再調達価額(新価)か?それとも時価か?
- 家財の補償はあるか?
- 地震保険には加入しているか?
例えば火災で住宅が焼失してしまった場合、契約金額の設定方法によっては保険金額の支払われ方に違いがあります。
「再調達価額(新価)」は、同程度の住宅を建て直すための費用が支払われます。逆に「時価」では住宅の消耗分を除いた費用しか支払われません。
たしかに契約金額を時価で設定すると保険料は安くなりますが、同じような住宅を再建するための費用は足りなくなってしまいます。そのため、再調達価額で契約しているか再度見直してみましょう。
また②家財の補償や③地震保険は必要なのか?という問いに対しては、必要であれば加入しておくべきです。
例えばマイホームを購入した段階では家財保険は必要ないと思っていた方。その後、高価なものを購入したということもあるでしょう。このような場合だと、家財保険への加入を検討した方が良いです。
家財保険に加入すると事故や災害によって家具や家電が損害を受けた場合、プランに応じて補償範囲は数百万円の補償が受けられます。
また近年頻発する自然災害。特に地震は日本中のどこで起きてもおかしくありません。地震保険は火災保険とセットで加入しないと入れませんので、不安な方は地震保険へ加入しているかどうか再度確認しましょう。
ちなみに、同じ火災でも地震に起因する火災は本来火災保険では適用外となっています。
いざ地震が起こった時に「火災保険が適用されずに十分な補償が受けられなかった…」ということのないよう、しっかりと確認しておきましょう。
火災保険の補償に関する特集記事はコチラ。
知っておきたい!火災保険を変更する場合の注意点
もし住宅ローンの借り換え手続きの際に、同時に火災保険にも入り直すことになったとしましょう。その場合の注意点をお伝えします。
まず、金融機関に言われるがままに加入しないことです。必ず複数社見積もりをとっておくことをおすすめします。
また現在加入している火災保険の保険料を数年分一括で支払っているというような場合。この場合は、途中で解約しても未経過期間分の保険料は戻ってきます。したがって、一括で保険料を支払ったから解約はもったいない、という心配は無用です。
火災保険の上手な選び方を知りたい!そんなアナタにおすすめな特集記事です。
今の火災保険は乗り換え?継続?借り換え時の見直しポイントを解説
借り換えで新たな住宅ローンを借りる場合、火災保険は乗り換えてもいいし今まで加入してきた保険をそのまま継続しても良いことがわかりました。
では、実際どのような判断基準で火災保険の継続を決めたら良いのでしょうか?ここではに火災保険の見直しポイントをご紹介します。
今すぐチェック!火災保険を見直した方が良い場合
今すぐ火災保険を見直すべき人とは、どのような場合なのでしょうか?まずは以下のチェック項目に当てはまるか確認してみましょう。
- 契約金額を時価で設定している
- 家財の補償が必要なのに、家財保険に加入していない
- 地震保険に加入していない
- 保険料が高い
1つでも当てはまったら、火災保険は今すぐ見直すべきです。
契約金額を時価から再調達価額に変更する、家財保険や地震保険に加入するといった場合、保険料は今より上がる可能性があります。
しかし、今の火災保険では補償されないような事故が起きたらどうしますか?例えば住宅ローンだけが残り、マイホームは全損してしまったとしたら・・・。
逆に「保険料を下げたい!」という方は、無駄なオプションをつけていないか確認してみましょう。例えば川の近くに住んでいないので水災の心配は少ないのに、水災を補償するようなオプションに加入している場合などが挙げられます。
以上のように、余計なオプションは外して必要な補償はつける、ということが火災保険では重要です。
現在の火災保険をそのまま継続した方が良い場合とは?
では逆に、現在加入している火災保険をそのまま継続した方が良い場合はあるのでしょうか?
例えば、補償内容が適切で保険料も下がらない場合。このようなケースでは、火災保険はそのまま継続でも良いでしょう。ただでさえ住宅ローンの借り換え手続きは煩雑なので、無駄に手間を増やす必要はありません。
また、保険料を長期一括で払い込んでいる場合。一括で払える期間が長いほど、保険料は割安となる仕組みですが、現在は最大でも10年までしか設定できません。
そこで、10年間以上の長期間で契約している場合はそのまま現在の火災保険を継続した場合が良い場合もあります。
「特約火災保険」はお宝保険!解約せずに継続がおすすめ!
実はかつて火災保険にもお宝保険が存在しました。その保険というのが、旧住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構)の特約火災保険です。
この特約火災保険というのは住宅金融公庫の住宅ローンを契約した際に加入できた火災保険なのですが、
- 保険料が安い
- 住宅ローンの満期まで加入できる
という点でお宝保険となっています。しかし、残念ながら平成28年4月1日以降、特約火災保険への新規加入はできなくなっています。
とはいえ、20~30年ほど前は住宅金融公庫の融資を受けるケースが多く、特に何も意識せずにこの特約火災保険に加入していたということも珍しくありません。
そして住宅ローンを住宅金融公庫のローンから民間のローンへ借り換えても、この特約火災保険は継続できます。
ということで、もしこの特約火災保険に加入されているなら引き続き継続することをおすすめします。
手元に証券がない?火災保険が「質権設定」されている場合の対処法
住宅ローンの借り換えを機に火災保険を見直そう!と思って保険証券を探してみたものの、手元に保険証券がない場合があります。
実は火災保険が「質権設定」されていませんか?ここでは火災保険の質権や質権設定されている場合の対処法についてご紹介します。
火災保険の「質権」とは?基本的な仕組みとその理由を解説
質権(しちけん)とは、債権の担保として優先的に弁済を受ける権利のこと。こう説明すると難しそうですが、簡単に説明すると次のようになります。
住宅ローンが火災で焼失した場合、優先的に金融機関が火災保険の保険金を受け取り、住宅ローンの返済に充てるという仕組みです。
例えばあなたのマイホームが火事で全損しても、今まで通りに住宅ローンを返済できるならかまいません。しかし、もし火災保険の保険金だけ受け取って住宅ローンの返済が滞ることがあったらどうでしょうか?
そのような事態をさけるために金融機関側が優先的に保険金を受け取る、これが質権設定です。火災保険に質権設定がされている場合、保険証券は金融機関に保管されているので注意しましょう。
火災保険が質権設定されている場合。必要な手続きとは?
もし現在加入している火災保険が質権設定されている場合。火災保険を変更するなら質権設定者(=金融機関)の同意が必要です。
そもそも火災保険の見直しをするには、保険証券に書いてある内容を知る必要があります。もしお手元に証券のコピー等がない場合は、金融機関に問い合わせるようにしましょう。
火災保険に質権設定がされていると、保険の見直しも少し手間となります。
火災保険の契約期間はかつては最長36年という長期に設定されていました。
しかし、平成27年10月からは火災保険の契約期間が最長10年となったことで、10年ごとに質権を更新すること手間やコストがかかるため、質権を設定する金融機関が減ってきたという背景があります。
そこで住宅ローンの借り換えでは、火災保険の質権設定がないところを選ぶのも良いかもしれませんね。
住宅ローンの借り換えでは火災保険も見直すべき!契約内容の確認を
見直しをする際には、まずは契約内容を確認するようにしましょう。必要な補償内容になっているか?補償内容に過不足がないよう再度点検する必要があります。また火災保険に質権設定されている場合もあるので、そのような場合は金融機関に問い合わせるようにしましょう。
近年、火災保険の制度にいくつか変更があったため、”過去に業者などから説明を受けた内容と食い違っている”と感じることもあるはずです。
火災保険に限らず、借り換えなどにあたっては現行の制度や情勢を把握して動くことが重要です。
この機に新しい知識を取り入れ、ベストな形を選択していただければ幸いです。
4年ほど専任の宅建士として不動産業者に勤務し、現在はマンション管理士・消防設備士として独立。
宅建士としての知識や立場を活かし、不動産売買時の疑問点などの相談を受けている。